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大規模修繕費用の基礎知識

マンションの大規模修繕は、建物の経年劣化に対応し、居住者の住み心地や満足感、安心安全、そして建物の資産価値を維持するための重要な工事です。

大規模修繕は計画的に実施することで、住環境を向上させ、適切な費用負担につながりますので、アドバイザーの福島が解説します。

目次

大規模修繕費用の基礎知識

外壁の塗装や防水工事、設備の更新など、建物全体に及ぶ工事が含まれます。

経年劣化を放置すると、問題が顕在化したときに、修繕費用が逆に膨大になる可能性があります。

12〜15年周期ごとに修繕費用がかかる

マンション大規模修繕工事の平均修繕周期
<マンション大規模修繕工事の平均修繕周期>

参考:国土交通省長期修繕計画作成ガイドライン(平成20年6月/令和6年6月改定)

大規模修繕は、一般的に12〜15年周期で実施されます。

この周期は、建物の各部位の耐用年数や劣化状況に基づいて設定されています。

具体的には、下記のような周期で修繕工事を行います。

  • 1回目:築12〜15年目
  • 2回目:築24〜30年目
  • 3回目:築36〜45年目
大規模修繕の周期
<大規模修繕の周期>

この周期を守ることで、建物の機能や、美観を維持することができます。

修繕時期を遅らせすぎると、より大規模な工事が必要になり、結果的に費用が増大する可能性があるため、計画的な実施が重要です。

回数が増えるごとに修繕範囲と費用が拡大

修繕回数がふえるごとに、修繕範囲と費用が拡大する
<修繕回数がふえるごとに、修繕範囲と費用が拡大する>

参考:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査

大規模修繕は、回数を重ねるごとに修繕範囲が広がり、それに伴って費用も増加する傾向にあります。

1回目は主に外壁塗装や防水工事が中心となりますが、2回目になると1回目の工事に加え、給排水管の更新なども含まれるようになります。

3回目以降になると、建物の主要構造部分の補修や設備の全面的な更新が必要になることもあります。

このように、回数が増えるほど工事の内容が複雑化し、費用も高額になるため、長期的な視点での資金計画が重要となります。

相談先企業により修繕費用の差が激しい

大規模修繕は、相談先の企業により修繕費用の差が生まれます。

管理会社に依頼した場合、管理会社が中間マージンを得ている可能性もあります。

また、コンサルタントを起用することで、コンサルタントの費用もかかります。

コンサルタントにより工事業者からも費用を受け取っている場合もあるため、その分、工事の見積もり費用に上乗せされています。

大規模修繕工事できる業者に、直接依頼することで費用を抑えられる可能性もありますが、業者により工事の品質と見積もり価格に大きな差があり、手抜き工事の問題もあるため、信頼できて費用が抑えられる業者を探すことが難しいのが現状です。

大規模修繕の費用が払えないときの対処法

大規模修繕の費用が払えないときの対処法
<大規模修繕の費用が払えないときの対処法>

大規模修繕の費用が予想以上に高額で払えない場合は、4つの対処法があります。

  • 一時金の徴収
  • 修繕積立金の値上げ
  • ローンの利用
  • 工事内容の見直し・部分的な工事を行う

これらを組み合わせることで、大規模修繕の費用が払えない問題に対応することができます。

一時金の徴収

修繕積立金が不足する場合、一時金(修繕積立金の臨時徴収)を検討することがあります。

即座に必要な資金を確保できる一方で、区分所有者の負担が大きくなるため、合意形成が難しいです。

十分な説明を行い、話し合いの上、合意形成が不可欠です。

修繕積立金の値上げ

長期的な視点で修繕積立金を見直し、月々の積立額を増額する方法です。

急激な負担増を避けるため、段階的な値上げを行いましょう。

適切な金額設定のためには、修繕計画に基づいた必要額を算出することが重要です。

しかし、値上げの前に必ず修繕計画の見直しを行います。

大規模修繕の費用は、依頼先の企業により大幅に変動します。管理会社やコンサルタントに依頼する場合、金額が大幅に上がる可能性もあります。

十分な見直しを行った上で、区分所有者への丁寧な説明と理解を得ることが大切です。

ローンの利用

修繕積立金や一時金だけでは大規模修繕の費用が払えない場合、マンション修繕ローンの利用を検討することができます。

このローンは、地方公共団体や民間金融機関が提供しており、通常5〜15年程度の返済期間があります。

ただし、金利負担や返済計画については慎重な検討が必要です。

工事内容の見直し・部分的な工事を行う

必要最低限の工事に絞り、緊急性の高い箇所の工事のみを行い、費用を抑える方法です。

例えば、雨漏り対策の防水工事のみを行う、もしくは防水工事と外壁塗装のみを行うなどです。

ただし、建物の安全性や機能性を損なわないよう優先順位の設定に専門的な判断が求められます。

材料や工法の見直しも一つのコスト削減の手段となります。

大規模修繕工事の延期

やむを得ない場合、大規模修繕工事自体を延期することも選択肢の一つです。

ただし、建物の劣化が進行するリスクがあるため、慎重な判断が必要です。

延期の条件として、建物の安全性が確保できる範囲内であることが重要です。

また、将来的な修繕費用の増大可能性というリスクも考慮しなければなりません。

延期した場合は、日常的なメンテナンス・点検を徹底し、劣化の進行を最小限に抑えましょう。

大規模修繕工事を段階的に実施する方法

大規模修繕費用の負担を軽減するため、工事を段階的に実施する方法があります。

例えば、防水工事を優先し、内装工事を後回しにするなどの方法があります。

具体的なやり方を解説します。

屋上・通路・バルコニーの防水工事から始める

<屋上・通路・バルコニーの防水工事から始める>

防水工事は、建物の寿命に直結するため、最優先で実施すべき項目です。

雨漏りは建物の寿命を縮めるだけでなく、住民の不安や生活環境の悪化に繋がるため、雨漏りは絶対に防がなければなりません。

また、通路・バルコニー防水は居住者の安全確保と建物の劣化防止に役立ちます。

実施時期としては、築10〜15年程度で検討するのが一般的です。

屋上防水は工法により耐用年数は5年~20年と大きく幅があるので、現在の防水層が何の工法により作られているのかを知っておく必要があります。

外壁塗装

<外壁塗装>

外壁塗装は建物の美観維持だけでなく、コンクリートの中性化防止にも重要です。

実施時期は築12〜15年程度が目安となります。

注意点として、下地補修を適切に行うことで長持ちするため、この点にも留意が必要です。

建物内部の設備

<建物内部の設備>

給排水管や電気設備など、建物内部の設備更新は居住者の生活に直結します。

給排水設備の法定耐用年数は15年ですが、官庁営繕基準では、20~30年となっています。

使用されている素材により実際の耐用年数は15~40年と大きく差がでます。

また、エレベーターは法定耐用年数は17年とされていますが、実際の耐用年数は20~30年程度であるため、築20〜30年程度で検討するのが一般的です。

大規模修繕費用が払えない原因

<大規模修繕費用が払えない原因>

大規模修繕の費用が不足する原因は主に6つあります。

  • 修繕計画が高額な内容になっている
  • インフレによる建設資材の高騰
  • 積立金額の設定が低い
  • 滞納者の増加
  • 設備投資に無駄がある
  • 普段のメンテナンス不足

これらは、問題が大きくなる前に対処できる内容でもあります。

修繕計画が高額になる内容になっている

修繕計画自体が現実的でない場合、予想以上に費用がかかることがあります。

過大な工事範囲の設定や、高額な材料・工法の選択、コストパフォーマンスを考慮しない選択などが原因となります。

しかし、大規模修繕を依頼する相手がどこかによって、修繕費用は2倍程度の差も出ることを知っておいた方が良いでしょう。

インフレによる建設資材の高騰

2021年1月と2024年7月の建築系の資材を比較すると、約30%ほど資材費用が上昇しています。インフレにより資材物価が上がることで、今までの工事費が跳ね上がり、大規模修繕の費用が払えないというケースが増えています。

建設資材物価指数グラフ
<建設資材物価指数グラフ>

参考:一般財団法人の建設物価調査会 建設資材物価指数グラフ2024年7月分指数(2024年8月1日更新)

積立金額の設定が低い

適切な積立金額を設定していないことが、費用不足の最大の原因の一つです。

長期的な修繕計画が曖昧だと、積立金額の設定ができません。

積立金額は定期的に見直しをするべきでしょう。

滞納者の増加

修繕積立金の滞納者が増加すると、予定通りの資金確保が困難になります。

経済状況の変化により個人の経済事情による滞納が増加することがあります。

また、管理組合の対応遅れも問題となるため、早期の滞納対策が重要です。

コミュニケーションが不足していると、支払い日と滞納理由の把握もできず、更なる遅れに繋がります。

設備投資に無駄がある

不要な設備投資や過剰な仕様変更により、大規模修繕の費用が膨らむケースがあります。

過剰なグレードアップや、不適切な工事内容、建物の状態に合わない工事の実施などが原因となります。

また、設備投資や工事をする個所の専門知識の不足とコスト意識の欠如により、費用対効果を考慮しない決定をしてしまうこともあります。

普段のメンテナンス不足

日常的なメンテナンスを怠ると、大規模修繕時により多くの費用が必要になります。

例えば、建物の防水状態の定期点検やメンテナンスが不足していると、雨漏りが起こります。

雨漏りが起こってから修繕をするのと、防水層の劣化などの兆候が見られたときに工事をするのでは、費用が大幅に変わります。

早期発見・早期修繕は費用を抑えるために重要なポイントです。

大規模修繕の費用不足を防ぐための方策

<長期修繕計画で、修繕費が足りなくなると分かるグラフ>

大規模修繕の費用が払えないことを防ぐためには、計画的、予防的な対策と長期的な視点が重要です。

これは、事前の準備により、将来の大きな問題を回避できるためです。

例えば、適切な積立金の設定や定期的な見直しなどが効果的です。

また、管理組合と区分所有者の協力が不可欠であり、全員で問題に取り組む姿勢が求められます。

大規模修繕費用の目安・相場を把握

適切な修繕計画を立てるためには、大規模修繕費用の目安や相場を正確に把握することが重要です。

ここでは例として、大規模修繕の費用の目安を紹介します。

3階建て20戸のマンション3階建て30戸のマンション4階建て50戸のマンション
1回目1200~2000万円1500~2400万円2500~4000万円
2回目1440~3000万円1800~3600万円3000~6000万円
3回目1800~4000万円2250~4800万円3750~8000万円

費用の目安は上記のとおりですが、マンションの規模や立地、工事内容により大きく異なる場合があります。

また、特に同規模・同年代のマンションの事例調査が参考になるので、近しい物件の事例の相場を調査しましょう。

適切な積立金額の設定

2種類の積立金の方法
<2種類の積立金の方法>

段階増額積立方式

初期は低額で始め、徐々に増額していく方式です。

この方式のメリットは、初期の居住者の負担が軽いことです。

デメリットとしては後年の負担が大きくなることが挙げられます。

新築マンションや若い世代が多い場合に適しています。

均等積立方式

毎月一定額を積み立てる方式です。

このメリットは、将来の負担増加がないことです。

しかし、デメリットとして初期の負担が大きいことが挙げられます。

安定した収入がある世帯が多い場合に適しています。

積立金の目安としては、築20年未満のマンションでは平米あたり200円~300円が一般的です。

ただし、この金額はあくまで目安となっています。

経費の見直しと節約

大規模修繕の費用不足を防ぐためには、日常的な経費の見直しと節約も重要です。

  • LED照明への交換:省エネ効果が高く、長寿命なため維持費も抑えられます。
  • 人感センサーの導入:不要な照明の点灯を防ぎ、電気代を削減します。
  • 清掃や植栽管理の頻度の適正化:過剰なサービスがあれば見直す
  • 依頼先の見直し:見積もりが適正価格かどうか見直し

これは、中長期的には資金の蓄積につながるためです。

大規模修繕の費用が払えないときは大規模修繕コストカットナビが問題を解決

大規模修繕工事の基本的な事についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

マンションの築年数、何回目の工事か、構造、階数、面積により、工事費用は変わってきます。

また、物価上昇もあり大規模修繕工事の工事費用は、年々上がっていく傾向にあります。

修繕積立金だけでは工事費を賄えなくなり、工事ができずそのまま老朽化して資産価値が下がり、売却もままならなくなるといった社会問題も起こってきています。

特に定年を迎えている区分所有者が多いマンションでは切実な問題です。

大規模修繕工事の費用を抑えて、マンションの資産価値を下げない努力が必要となります。

大規模修繕工事の費用を抑えたい方は、アドバイザーの福島へご相談ください。

無料でご相談にのっています。

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